はじめまして、エールハウス経理部の伊丹淳一です。
今回は、平成28年度税制改正により設けられた「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」を取り上げます。是非ご参考にしてください。
1.被相続人の居住用財産(空家)を売却した際の3000万円の特別控除の創設
『親の自宅を相続で取得したけど、そこに住む予定もなく、空家のままになってしまっている』など、適正な管理が行われずに近隣の生活に影響を及ぼしてしまうケースがとても増えています。平成28年度税制改正により、空家の処分促進のため、【親から相続した空家を譲渡した場合、空家とともにその敷地を譲渡する場合、または空家を除去した後その敷地を譲渡した場合】、一定の要件を満たせば、譲渡益について3000万円の特別控除が受けられるようになりました。
(計算式)
譲渡所得 = 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)- 3000 万円
2.制度の概要
対象となる空家は昭和56年5月31日以前に建築された住宅で、家屋も売却する際には耐震リフォームをするなどして新耐震基準を満たしたうえで譲渡する必要があります。ただ、耐震リフォームを行わず家屋を取り壊して、更地で売却する場合にも適用が可能であり、この点がポイントとなります。
この制度を適用するための要件の概要は以下のとおりです。
①相続の開始の直前において、被相続人の居住の用に供されていた家屋であること
②相続の開始の直前において、被相続人以外に居住をしていた者がいなかった(被相続人のみが居住していた)ものであること。
③昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物を除く)であること。
④昭和28年4月1日から平成31年12月31日までの間に譲渡すること。
⑤相続開始日以降3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること。
⑥譲渡の対価の額が1億円以下であること。
⑦次のAまたはBのいずれかの要件を満たすこと。
A 耐震工事をした後に譲渡する場合
・譲渡時にその家屋が現行の耐震基準に適合していること。
・家屋及び敷地が相続時から譲渡時まで事業の用、貸付の用、居住の用に供されていないこと。
B 家屋を解体した後に譲渡する場合
・家屋を除却した後に敷地を譲渡すること。
・家屋が相続時から除却時まで、敷地が相続時から譲渡時まで事業の用、貸付の用、居住の用に供されていないこと。
3.適用を受けるための注意点
この特例は相続開始直前に被相続人が一人で居住していた家屋が対象となるため、配偶者が同居している、一人住まいで相続開始直前に老人ホームに入居していた場合には適用されませんので、注意ください。
4.適用を受けるための手続き
この特例は、確定申告書に下記の書類の添付がある場合に適用されます。
(1)家屋又は家屋及び敷地等を譲渡する場合
①譲渡所得の金額の計算に関する明細書
②被相続人居住用家屋及びその敷地等の登記事項証明書等
③被相続人居住用家屋又はその敷地等の売買契約書の写し等
④被相続人居住用家屋等確認書
⑤被相続人居住用家屋の耐震基準適合証明書又は建設住宅性能評価書の写し
(2)家屋を取壊し、除去又は滅失後の敷地等を譲渡する場合
①上記(1)の①②④と同じ
②敷地等の売買契約書の写し等
5.まとめ
相続による空家不動産の取得は、購入当時の売買契約書がないため、取得費が不明な場合が多く、この制度が利用できるかどうかは重要なポイントとなります。取得費が不明の場合は、「概算取得費」を用いて、譲渡価額の5%を取得費として譲渡所得を計算します。そのため、譲渡所得が大きくなってしまうという問題が生じます。
この制度を利用すれば、最大で約610万円の税金が減らせる場合があります。この税金面の優遇措置を機に空家の売却についても検討されてはいかがでしょうか。
なおエールハウスはリフォーム工事のみならず、不動産免許も取得しており、不動産取引も行っております。
売却をご検討される場合は、ぜひお気軽にご相談下さい。