こんにちは!エールハウス社長、一級建築士・宅地建物取引士の伊丹です。
そろそろ外壁が色あせてきたな……と思った矢先、外壁塗装の訪問販売員がやってきて「おたくのサイディング、そろそろ塗り替えないと雨漏りしますよ」と言われた経験ないでしょうか。
「看板立てさせてくれたら宣伝になるので、半額にします」などとあおられ、契約しようか迷っている方いませんか?もしあなたがそうなら、ちょっとだけ冷静になって本記事を読んでみてください。

今回は、サイディングを塗装する前に知っておくべき基礎知識をご紹介します。今後、外壁塗装のご予定がある方は参考にしてください。
サイディングは外壁塗装が必要か?
大多数のサイディングは、外壁塗装が必要です。なぜなら、サイディングの素材は水を吸うことで腐朽や劣化、サビが発生するからです。
さっそく、サイディングと塗装の必要性についてご紹介していきましょう。
サイディングとは?
家を建てたことがある方以外は「サイディング」という言葉をご存じないかもしれません。まずは、サイディングがどういうものなのか、簡単にご説明しましょう。
サイディングは、外壁仕上げ材のひとつです。「外壁仕上げ材」とは、外壁の一番外側に貼る材料のことで、たとえば以下のようなものがあります。
- サイディング
- 木
- タイル
- モルタル
- ALC(軽量気泡コンクリート)
外壁仕上げ材の機能は、紫外線や風雨から建物を守ったり、騒音を遮断したりすることです。外観のデザインにも大きな影響を与えます。
サイディングの大きさは、よく採用されている「窯業(ようぎょう)系」と呼ばれるもので「455mm(1.5尺)×3030mm(10尺)」あります。これをつなぎ合わせて貼っていきます。
以前はクギ止めが主流でしたが、今は金具止めが主流です。サイディングとサイディングの継ぎ目にはシーリング材を充填して、雨水の進入を防ぎます。
サイディングの種類と塗装の必要性
サイディングは大雑把にわけると4種類ありますが、そのうち「人工樹脂系サイディング」以外の3種類は撥水性がなく、塗膜で保護する必要があります。
サイディングの種類 |
塗装が必要な理由 |
木質系サイディング |
紫外線や風雨で劣化する |
窯業系サイディング |
主成分がセメントで、水を吸って劣化する |
金属系サイディング |
サビて腐食する |
サイディングを塗装すると、美観の向上だけでなく撥水性を持たせる効果があります。サイディングの下には防水シートも貼るので「塗料+外壁+防水シート」の三段構えで家を守っているのです。
なお、人工樹脂系サイディングは顔料(色の成分)を練り込んであるので塗装する必要がありません。撥水性も元から備わっているので、雨水を吸いません。
サイディングの劣化症状
つづいて、外壁の劣化症状やメンテナンスについてご紹介します。
劣化が進むと塗膜が朽ち、外壁材の修繕が必要になる
サイディングは、塗り替え時期がくるとサインが現れます。それを放置すると外壁の劣化が進み、やがて大規模な修繕が必要になります。
以下に、サイディングの劣化症状をご紹介します。適切なタイミングでメンテナンスするための参考にしてください。
症状 |
該当するサイディング |
対応 |
汚れ |
木質系、窯業系、金属系、人工樹脂系 |
経過観察または掃除 |
苔・藻・カビが生える |
木質系、窯業系、金属系、人工樹脂系 |
|
ヘアクラック(細いヒビ) |
窯業系 |
|
チョーキング(白化) |
木質系、窯業系、金属系 |
塗り替え |
白サビ・赤サビ |
金属系 |
|
塗膜の剥がれ・膨れ |
木質系、窯業系、金属系 |
|
シーリングのひび割れ |
木質系、窯業系、金属系 |
修繕が必要 |
クラック(外壁材の亀裂) |
窯業系 |
|
凍害による破損 |
窯業系 |
|
外壁自体の変形 |
木質系、窯業系、金属系、人工樹脂系 |
|
雨漏り |
木質系、窯業系、金属系、人工樹脂系 |
聞きなれない専門用語が出てきましたので、説明しておきましょう。
ひび割れはおおよそ0.3mm未満のものを「ヘアクラック」と言いますが、ヘアクラック程度ならとくに問題ありません。0.3mmを越えてくると、雨水の進入を防ぐために修繕が必要です。
「チョーキング」は、塗膜が劣化することで起こります。チョーキングを起こしたサイディングに手で触れると、白い粉のようなものが付着します。
「凍害」は寒冷地で発生します。水を吸ったサイディングが凍り、凍結膨張でサイディングがひび割れたり剥離したりする現象のことを言います。
シーリング(コーキング)もメンテナンスが必要

「ヘアクラック、チョーキング、凍害」をご紹介しましたが、もうひとつ「シーリング」についても解説しておきましょう。
シーリングとはサイディングどうしの継ぎ目の隙間を埋める樹脂性の充填材のことで「コーキング」と呼ぶこともあります。シーリングとコーキングの違いは厳密に定義されておらず、建築現場では同義語として使われています。
耐用年数を過ぎたシーリングは、ひび割れや退色を起こします。一般的なシーリングは10年程度でメンテナンスが必要ですが、最近は高性能の製品も出てきていて、期待耐用年数が30年のものもあります。
シーリングのメンテナンス費用は、以下のとおりです。
メンテナンス方法 |
備考 |
メンテナンス費用 |
打ち増し |
プライマー塗布・シール打ち |
500~700円/m |
打ち換え |
既設シール撤去・プライマー塗布・シール打ち |
900~1,200円/m |
サイディングの外壁塗装
つづいて、サイディングの塗装について詳しく解説していきます。
塗料の種類・耐用年数・費用の目安
外壁塗装で使う塗料は、主に以下の成分で作られています。
- 顔料(色を付ける材料)
- 樹脂(耐用年数に影響する)
- 添加物(機能を付加する材料)
サイディングの中でも複数色で着色された製品は、塗り替えるときに1色でベタ塗りすると元々の意匠をそこなってしまいます。そんなときは、クリア塗料を使う方法もあります。
クリア塗料は顔料を含まない透明の塗料で、現在のサイディングの状況をそのまま仕上がりに活かせます。既存サイディングの状態が綺麗なら、クリア塗料を使うといいでしょう。
なお、光触媒や親水性といった機能をもつサイディングは塗膜が密着しにくい(はがれやすい)ので、クリア塗装が向いていません。
塗料の耐用年数は、主に主成分の人工樹脂で決まります。現在はシリコン系樹脂塗料が主流で、おおよそ10年から15年程度もちます。その他の樹脂を使った塗料もご紹介しましょう。
種類 |
耐用年数の目安 |
費用の目安 |
アクリル系樹脂塗料 |
5~8年 |
1,400~1,600円/㎡ |
ウレタン系樹脂塗料 |
7~10年 |
1,700~2,200円/㎡ |
シリコン系樹脂塗料 |
10~15年 |
2,300~3,000円/㎡ |
フッ素系樹脂塗料 |
15~20年 |
3,800~4,800円/㎡ |
外壁塗装では、塗装費用以外にも「足場設置、養生、下地処理、高圧洗浄」などの費用がかかります。
参考まで、シリコン系樹脂塗料(日本ペイント ファインSi)を使った場合の工事価格(足場設置、養生、下地処理、高圧洗浄含む)を載せておきましょう。
坪数(延床) |
参考価格 |
25坪 |
62万円~ |
30坪 |
69万円~ |
35坪 |
74万円~ |
外壁塗装では、屋根塗装やバルコニーの防水塗装も合わせて実施するケースが多いです。同時にやることで「足場設置代、養生代、高圧洗浄代」などが1回で済みます。
外壁塗装の工法と工期
サイディングの塗り方は、主に刷毛やローラーを使って手塗りでおこないます。タイル柄やレンガ柄のサイディングは、表面部分と目地部分を2色で塗り分けることも可能です。
数は少ないですが、無塗装サイディングの上に吹き付け塗装するケースもあります。吹き付け塗装はスプレーガンを使って塗料を吹き付ける塗り方で「リシン、吹付タイル、スタッコ」などいくつかの仕上げ方があります。
サイディングの手塗りは、3度塗りで仕上げるのが一般的です。まずは、サイディングと塗料の密着性を高めるための下塗り用塗料を塗ります。そのあと、仕上げ用の塗料を中塗り・上塗りと2回塗って仕上げます(1回の製品もある)。
サイディングの塗り替えの工期はおおよそ7~10日ほどで、以下の順序で進んでいきます。
- 足場設置
- 高圧洗浄(水洗い)
- 下地処理
- コーキング
- 養生
- 下塗り
- 中塗り(上塗り1回目)
- 上塗り(上塗り2回目)
- 点検と手直し
- 足場解体
なお、雨や雪の日が少ない春と秋は外壁塗装の繁忙期です。その時期に工事したい方は、早めに動き始めましょう。予約が取りにくくなります。
メンテナンスの周期
外壁塗装の周期は、塗ってある塗料の種類や所在地の環境によります。たとえば以下の環境は塗料の劣化が進みやすいので、やや早めにメンテナンスしていくほうが良いでしょう。
- 幹線道路が近い
- 海が近い
- 日照量が多い
- いつも日陰でジメジメしている
どんな塗料が塗ってあるのかわからないときは、少なくとも10年に1度はチェックしましょう。先述の劣化症状が現れていないか、確認することも大切です。
サイディング塗装業者の選び方

最後に、外壁塗装業者の選び方をご紹介します。
外壁塗装は、悪質な業者が多いと言われます。おそらく、工事代金に「定価」のような基準がないことや、不具合の原因が(外壁なのか、手抜きなのか)曖昧になりやすいことが理由でしょう。
国民生活センターに寄せられる紛争を見ると、とくに訪問販売業者とのトラブルが多いようです。とくに以下のような誇大なセールストークにだまされたケースが目立つので、お気をつけください。
- 30年もちます
- ひび割れを防ぎます
- 15年の保証があります
- 特別に大幅値引きします
外壁塗装業者を選ぶときは、地元で実績がある業者から探すのが安心です。地域の特性がわかっているので、気候や景観関連の条例に合わせて最適な提案をしてくれます。
修繕が必要な場合は、塗装業者ではなく建築会社に依頼するとよいでしょう。
修繕は塗装職人以外に大工や板金業者、電気工事業者など、複数の職人の手配が必要になることがあります。自分で全て手配すると大変ですが、建築会社に頼めばすべて手配してもらえます。
【まとめ】サイディングを外壁塗装する前に知っておくべき基礎知識
サイディングは、人工樹脂系を除いて外壁塗装が必要です。塗装時期は主に塗ってある塗料の耐用年数で決まりますが、チョーキングやサビなどの劣化サインも目安にして適切なタイミングで実施しましょう。
塗装業者を選ぶときは、地元で実績のある会社から探すとよいでしょう。建築会社に発注すると、大工や板金業者など必要な職人をすべて手配してくれるのでオススメです。
外壁塗装は雨が少ない時期が繁忙期で、予約が取りにくくなります。春や秋に工事したい方は、可能な限り早めに動きはじめましょう。
なお弊社は1978年創業で、経験豊富な1級建築士や職人が多数在籍しております。横浜・藤沢・逗子・横須賀・湘南エリアにて建築工事だけでなく外壁塗装も自社施工していますので、塗装のお悩みもお気軽にご相談ください。
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